第五部「神器覚醒編」(第53話~第65話)
本部は、三つの章から成る。
・第1章「無限事象~インフィニット・シフト~」(第53話~第57話)

2076年4月。
日本が誇る天才一族「四天王一族」の分家「南鉋家」の長男こと天才発明少年「南鉋竜」は幼い頃からアイドル大好きの10歳の男の子。
「究極のアイドルとは何か?」と日夜研究に明け暮れている。

彼は恵まれた「四天王一族」の環境にいる自分から新しい発見は出来ないと考え、当主の「真緑幻宗」に家を出て自立したいと話す。

快く許可をもらい、「竜」は助手の「キッカ・ホワイトファントム」と共に咲那町(さくなちょう)の山奥に「南鉋研究所」を設立し晴れて自立したのであった。
それから程なくして、南鉋研究所に一枚のプリチケが届く。
「竜」は自らの手で「究極のアイドルとは何か?」を知るため、単身プリパラに乗り込む。

プリパラでの「竜」は、自らが考えた究極のアイドル「りぅ✩★」と姿を変え、堂々デビューするのであった。

グランシャリオとしての活動…

デススターとの激闘…

もう一人の竜との戦いを経て…

真緑幻宗の野望を食い止め…

幻討十二死従と戦う。

そして最後には、北渡時南斗が覚醒した天界王によって世界が滅びる。
竜がプリパラデビューをしてからの全てのイベントを経て、最後には天界王によって世界が滅びる。
現世界は、この歴史を永遠に繰り返し続けていた。
世界が繰り返し=ループを経ていることに気づいているのは、幻討十二死従の生き残った6体の魔神と天界王。

そして、神アイドルとなり前世(神造兵器)の力の半分を取り戻していた「シャリオ」ただ1人であった。
しかし、シャリオはループの事実に気づいていることを公言することが出来なかった。
幻討十二死従に知られれば最後、何の打つ手立てもないまま殺されることに気づいていたからだ。
世界のループ回数が423回目を迎えた時、天界王は一言「滅びの時が来た」と発する。
天界王の言葉を聞いたその後、424回目のループでついに現世界の完全破壊を幻討十二死従の生き残った6体は目論む。
424回目の天界王による世界の破壊が始まる時、全てが終わるはずだと幻討十二死従の6体は考えた。
だが、そうはならなかった。
唯一ループを認識していたシャリオが、ループ前と異なる結末に仕組まれるよう、幻討十二死従に気づかれない裏で十二天使達の行動に指示を出していたのだ。
ループ前の世界では、保守派と殲滅派の二手に分かれて行動が分断していた。
だが、424回目のループでは真緑幻宗の安全を確保しプリパラ内に連れてくることで四天王一族の屋敷を十二死従の6体が襲う、という事実がなくなる。
12人の天使と死従が一同にパラ宿のプリパラに集結する…という内容に変わったのであった。
24人による「真・神アイドルグランプリ」の対決が始まり、結果は十二天使側の勝利となる。
そして竜と時南斗を近づけさせないことで天界王は覚醒せず、事なきを得る…と、シャリオは確信していた。
だが、あろうことか何事もなかったかのように425回目の世界のループが始まる。
ループ世界で結末をどれだけ変えようが、最初に起こってしまったこと(=世界の消滅)そのものが変わることはなかったのだ。
424回目をもって現世界は滅ぼそうと考えていた天界王であったが、シャリオの健闘を「面白い」と評し、425回目のループを始め「これこそ真の終焉…」と訂正した。
ループ世界の結末をどう変えようが、現実に変化はない。
シャリオは絶望するものの、424回目同様に裏で暗躍して幻宗を助け、24人の「真・神アイドルグランプリ」を決行する。
しかし、最後の最後で424回変わることのなかった竜の行動に変化が現れる。
今まで天界王が覚醒した後自分の言葉で天界王を説得しようと近づこうとしても、シャリオは殺される危険性を鑑みて竜を天界王の元から必死に離れさせていた。
だが、最後の最後で無理だと絶望したシャリオは425回目のループでは竜を止めることはなかった。ここだけが今までのループとは異なる行動だった。
このちょっとした変化が、大きな転機となる。
竜は天界王の体に直接触れたことによって、世界がループしていた事実に気づくのである。
竜はこの事実から、天界王に次のような言葉を投げかけた。
「時南斗ちゃんが世界を滅ぼさないで繰り返しをしていたのは、未練があるからだ!天界王なんかじゃない、時南斗ちゃんとしての心が残っているからだ!君はまだ、完全に破壊神にはなり得ていないんだよ!」
この言葉を聞いた天界王は大きな動揺を見せる。
「破壊、破壊、破壊…私は、破壊を…」
破壊こそが全て。
その使命が確かにあるはずなのに、竜の言葉を聞いたことで激しい頭痛に襲われる天界王。
時南斗としての意識を取り戻すか…に思えたが、この状況を危険視したカルマは竜を天界王の目の前で殺害を決行する。
時南斗としての意識を少しだけ戻っていただけに恋人である竜が死んだという事実はあまりにも衝撃が強く、結果として天界王としての憎悪の力を増幅させるに至ってしまった。
天界王を止める最後の切り札、南鉋竜は死んだ。
世界を救う手立てはもう完全に潰えてしまった瞬間であった。
・第2章「創造神の器」(第58話~第64話)
カルマによって殺された竜であったが、気づいたら全く知らない場所に自分は存在していた。

そして、目覚めた場所には老人ともう一人の竜がいた。
「よぉ竜…死んじまうたぁ情けねぇな。」
もう一人の竜によると、竜が現在存在する場所は「死んだ人間が辿りつく場所」…つまり、死後の世界であるという。
何とか天界王のいる現世界に戻りたいと願う竜だったが、死んでしまったことに気づいた以上手詰まりを痛感する。
一方、もう一人の竜はこの状況をむしろ好機だと竜に伝える。
「時南斗ちゃんと『対等の力』を得られると言ったら、てめぇはどうする?」

もう一人の竜は、破壊神の器である時南斗とは真逆の力…創造神の器の力を、竜に覚醒させようと考える。

もう一人の竜の話によると、南鉋竜と北渡時南斗という2人の存在は、真緑幻宗及びオメガの母親こと東羽終(ひがしばおわり)によって作り上げられた進化した人類(=God=G)の素体…進化した人類のアダムとイヴとして生み出された存在であったという事実を告げる。
時南斗は破壊神として覚醒するための力を内包するように作り上げられたのに対し、竜はその対となる創造神として覚醒するための力を内包している。
二人が真の「神」として覚醒し世界を導くことによって人類は新たな扉を開くことが可能だというのが幻宗が計画した「G計画」の一端であった。
そして現在、時南斗は破壊神の器としての力をカルマによって開かれ、覚醒した。
その理屈と同じように、この死後の世界でもう一人の竜が竜の創造神の器としての力を覚醒させるというのが彼の言い分であった。
そのためにもう一人の竜は、竜の真の力を解放するための協力者を死後の世界から呼び出していた。
それが、もう一人ついていた老人こと古代人「ガーランド」である。
ガーランドは生前、「仙道」という不思議な力を研究、伝承者として生きていた。
仙道は、自らの心の中の想像…イマジネーションから有を生み出す力であると説くガーランド。
極めることが出来れば、どんなものでもイマジネーションの力によって生み出すことが出来るのだという。
そして、創造神とは有から何かを生み出す絶対的な存在。
そもそもの話として、創造神が生まれ望んだことによって、世界が生まれた。
創造神の巨大なイマジネーションという願望が生み出したのが世界という概念だ。
つまり、仙道のイマジネーションによって何でも生み出すことが出来るという力は、本質的に創造神に最も近い力である。
竜が仙道を極めることこそ、創造神の器として覚醒する近道だともう一人の竜とガーランドは考える。
しかし、仙道を極めるのは並大抵の努力では決して到達することの出来ない領域だという。
もう一人の竜も現世界に襲撃する前(本編に登場する前)、仙道を修行していたが約千年かかっても完全に会得することは叶わなかったという。
それでも挑戦する覚悟はあるかともう一人の竜は問う。
「時南斗ちゃんを助けることが出来るなら。」
即答だった。
竜は、何も迷うことなくもう一人の竜とガーランドによる仙道の修行を行うことを決意する。
こうして、死後の世界で竜はもう一人の竜とガーランドと共に仙道の修行を始める。
一方の現世界。

竜が死んだショックによって憎悪の力が増大し破壊神としての真の覚醒をする天界王と、その圧倒的恐怖に立ち向かおうとする竜以外の十一人の天使達。
天界王は高みの見物を言わんばかりに立ち去り、十二死従の生き残った6体に残りの天使達の始末を任せる。
オメガ・リオルを始めとして十二死従と戦う天使達。
天界王はカルマと共にプリパラと現実世界を繋げ、プリパラシステムを使って世界中の人間を次々と消滅させていく。
十一人の天使達と天界王及び5体の死従の戦いは苛烈を極め、互いに多くの戦死者を出していく。
時間にして2時間。
世界中の人々や十一人の天使は天界王とカルマに掌握されたプリパラシステムによって消滅、最終的に天界王の力によって世界が崩壊。
第4部の結末と変わらない世界の最期を迎える。
全ては、十二死従及び天界王の勝利と思われた。
「もうやめてくれ、時南斗ちゃん!」

死んだはずの竜が、天界王とカルマの前に現れた。
・第3章「最終決戦」(第65話)
世界の人々は死に絶え、十二天使も十二死従も互いに多くの戦死者を出し世界そのものも消滅してしまった現状。
竜は死後の世界で仙道を会得し、「生き返りたい」というイマジネーションから復活した。
また、その復活までの過程において、戦死した十二天使達及び協力者2人と死後の世界で合流し、それぞれ天界王を止めるための力や激励を受けていた。

シャリオからは神造兵器としての力の全てを。


みさきちからは「幼い頃友達のお母さんからもらった大切なお守り」を。

キカイオーからは時南斗の大好きだったレーズンパンを。

ディノこからは、もう一人の竜のデータの入ったプリチケを。

リオルからは、強大すぎる力を制御するためのリミッターのかけ方を。

ポッケからは、好きな人が言われて一番嬉しい言葉を。

ネクサスからは、『特異点』として崩壊した時空の中でも存在することができる力を。

デトナとこのはとはのこからは、今の竜に最も似合うコーデを。

クラッシャーからは、素手で隕石を割った不思議な力(=破壊の力)を。


ジョーカーからは、キングラウザーと呼ばれる武器を。

そして全員を代表して万が一何かあった時のために竜を止めるストッパーにオメガが選ばれ、オメガと共に崩壊した現世界の時空の中へ向かった…という流れであった。

天界王の元に戻ってきた竜の姿は、今まで見せることのなかったものだった。



シャリオの眼鏡とみさきちのヘアカラーに「りぅ✩★」としての力を合わせた姿で、「創造神としての器の姿」そのものだった。

崩壊した時空の中で、天界王に最後の戦いを挑む竜。
彼は仲間の背負ってきたものと、年数にして400年ほどかけて会得した仙道の力が天界王を圧倒する。
「何故、何故…私は、勝てない…何故…」
竜との実力の差に戸惑いを隠せない天界王。
「今の時南斗ちゃんは、独りだから。
独り、鳥籠の中に閉じ込められた鳥のように羽ばたけない状態。
でも僕は違う。僕は、僕と皆の想いを背負って時南斗ちゃんに立ち向かった。」
「独り…皆…わからない、わからない…」(ス…ケ…テ…)
「み~んなトモダチ、み~んなアイドル。
その気持ちが、僕を強くしたんだ!」
「謎、謎、謎…」(助けて…)
竜は、頭を抱える天界王の心の声を微かに感じ取る。
(助けて…竜君!)
それは、時南斗の心の叫びだった。
竜は、イマジネーションの力で「時南斗に会いたい」と願う。

その結果、天界王の意識を封じ込め北渡時南斗としての意識に呼び戻した。
カルマによって目覚めさせられた破壊神の器天界王を封印したのだ。
カルマは最後の切り札を失い成す術がなくなったためか、ついには竜に共に協力して全ての人類を滅ぼさないかと提案。
竜は吐き捨てるように「君を許さない」と、手にしたキングラウザーでカルマを斬る。
こうして、幻討十二死従は全員完全に消滅した。
崩壊した時空の中に取り残される竜と時南斗とオメガ。
どうにか世界を元の姿に戻したいと竜は考える。
竜は残された最後の手段として、自分の持つ最大のイマジネーションを力に変え、崩壊してしまった世界を再構築しようと考える。
しかし、1つの世界を復活させるほどのイマジネーションとなると、その精神にかかる負荷は並大抵ではない。
最悪、竜が死ぬ可能性もある。
そうなってしまっては、世界は崩壊したままで誰一人助けることはできない。
それでも竜は世界の再構築を決意する。
オメガは、時南斗の封印した天界王の力を合わせることでその負荷を軽減できるのではないかと考え、時南斗にもう一度天界王の力を呼び戻させるように提案。

破壊神の器としてカルマに精神を乗っ取られていた状態とは異なり、時南斗として誠にコントロール出来るようになった天界王の力を竜に預ける。

全ての持てる力を使い、世界の再構築に挑む竜と時南斗。
二人の想いの果ては…!

~トゥルーエンディング~
(※真緑幻宗イラスト提供…藤堂やしき様)