前話の冒頭(The beginning 1)
前話直近 (The beginning 4)

~2077年 4月7日(水曜日) 12時55分 多留名学園 2年赤組教室~


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俺は昨日から「GAME OVER」という8文字の英語に頭を抱えている。

ドンキーコング
開始15秒で俺の操作するおっさんを殺すステージ上のゴリラの鬼畜っぷりに絶望した。

今日から学校も普通に授業が始まり今はお昼休みの時間だが、授業中基本寝てはいるものずっとそればかり考えていた。

NEO
「そんなに落ち込むこともないだろ。何回でも挑戦できるんだし」

違う。そういう問題じゃない。
(これは発売元の任天堂って会社が俺に出してきた最初の挑戦状だ。
「1 PLAYER GAME B」をやらせる気がねーなら「1 PLAYER GAME A」を秒殺してゲームエンドだ。)

こう言ってたのに、何も出来ずに終わってしまったことがショックなんだよぉぉぉぉぉぉ!!!

「なんであんなに自信満々だったんだ?」


(俺は自慢じゃあないが、オンラインゲームならフォロワーやギルド仲間に『剛指(ごうし)のCyberさん』って呼ばれるくらい、ゲームの腕に自信があるんだ。
だから、このレトロゲームも余裕だろうと天狗になっていた。)


「現実は中々の下手くそプレイだったな」

チュートリアルもなく、初プレイボーナスや連続ログインボーナスもなく、いきなり始められてボスに殺されるなんて思いもしなかった。
本気で甘かった)


「で、どうする?諦めるのか?」

(いいや。怖がってても何も始まらねぇ。
俺にはまだ「ドンキーコング」をクリアしても8999本のゲームが控えているしな。
それにミクの言う通り、あのゲームは何回でも挑戦できるんだ。
何回死んでもいいから覚えてクリアすりゃあいい。
分かりやすい攻略法だ)


「うむ。それでこそ私の見込んだ男よ、維」


(ミク、帰ったら再挑戦だ。昼休みだし飯にするか。腹が減っては戦はできねぇ!)

…が、現在時刻は12時57分。

後3分で5時間目の授業始まっちまうじゃないか。

周りはもう教科書出してきちんと待機してる連中ばかりだった。

この空腹状態で5・6時間目を過ごすのはキツいものがあるぞ・・・!




---先生すいません。調子悪いんで、トイレ行ってきてもいいですか?

「なんだ彩波、腹でも痛いのか?」

---そんな感じです。失礼します。

5時間目の化学の時間。

退屈なオリエンテーションの最中、俺は教室を抜け出そうとした。

「彩波、顔色悪いし保健室に行ったほうがいいんじゃないのか?」

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そう言って「千歳倭(ちとせやまと)」は俺を気遣ってくれた。

すると、クラスの女子は「千歳君、友達想いのいい人!」なんて声も聞こえてきて、俺は気分が本当に悪くなりそうだった。

「そうっすよ彩波ちゃん!無理は禁物!」


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続いて、「石狩爆是流(いしかりばぜる)」も後押ししてくる。

てめぇら余計なことをしやがって…!

---ありがとう、千歳君と石狩君。一回トイレに行って様子見してくるよ…

俺は営業スマイルでその場を何とか離れる。



「ありがとうございました~またお越しくださいませ~!」

ファ○マの可愛い女性店員さん(おっぱいもそこそこ好みのサイズだった)の笑顔に癒され俺は店を後にする。

俺は何をしたかって、具合が悪くてトイレに行きたかったわけじゃあねぇ。

空腹で死にそうだったから、学園裏のコンビニでシーチキンマヨネーズおにぎりを買いに行きたかっただけだ!

千歳と石狩の野郎が余計なことを言うから、危うく保健室に厄介になるとこだったが事なきを得た。

「そもそも昼休み中にご飯を食べなかったお前が悪いだろうに」


ドンキーコング

(黙れ!誰のせいであのゴリラに俺は苦悩してると思ってるんだ!)

「重く考えすぎだとしか思わないがなぁ」

しかしあのゴリラ、思い出せば出すほどムカつく外見だぜ。

でもそれと同じくらい、15秒で処刑された恐怖心がまた蘇ろうともする。

さて、さすがに学園内で買い食いしてる場面を目撃されるわけには行かない。

俺はさっさとおにぎりをコンビニ裏の駐輪場で食すが…

「彩波維君?」

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俺の目の前に、女の子が1人近づいてくる。

あいつは確か転校生の…

---えっと、田中七奈子(たなかななこ)?

「彩波維君、貴方なんでこんな所にいるの?
具合悪くてトイレに行ってたんじゃないの?」


至極真っ当な質問を、田中はしてくる。

---すまん、あれは嘘だ。昼休みの時昨日あった嫌なこと思い出して食欲なかったんだが、授業中に腹が減ったからこうして買い食いした次第だ。

嘘をついてもしょうがないと思ったので、俺は平常心で田中に状況を教える。

先生にチクられて終わりかなぁこれ。

百代先生の説教クソ長いんだよなぁ…どうすんだこれ。

でもバレちまったものはしょうがない。

完璧にバレないルートでここに来たつもりだったのにな。降参だ。

「嫌なことって何があったの?」


すると田中は怒るどころか、俺の悩みについて突っ込んできた。

予想外だった。なんて答えていいか分からなかった。

「あ、ごめん…プライバシーに関わる話かあるいはデリケートな問題なのかな?
だったら無理には聞かない。」


「違うぞ小娘。こいつは私や天魔王ゼクスオメガのことを何て言えばいいか悩んでるんだぞ」

聞こえもしないのに、ミクはなぜか田中に突っ込む。

ドンキーコング
---色々あって、ゴリラが怖くなってしまったんだ

「ゴリラが怖い?」

「超意訳しすぎだろ」


(だって手羽先とか天魔王オメガとかサイバーエルフとか信じるわけねーだろ!田中すごく真面目そうだし!)


「そうね。ゴリラは確かに屈強で力強いイメージがあるから、恐怖するのも無理はないわよね。」


田中は、驚くこともなく普通に返答してくれた。

カニコング
「私も勇者なりたての13歳の夏にカニコング4体と戦った時は、相棒の『ポッケ』と一緒に怖がったなぁ…ってこれはなんでもない!」

途中からブツブツ独り言を言い出す田中だったが、まさか俺の突拍子のない話に乗っかってくれるとは…。

---田中って、面白いな。
俺、悪いことしてるしその言い訳にゴリラがとかわけのわからんこと言ってるのに、真面目に返してくれるんだからさ。


「そ、そうなのかしら…?
こういう時はゴリラってなんでやねん!って突っ込むべきだったのね。この世界の常識はよく分からないわ…。
あ!でもね彩波維君、恐怖心は武器にもなるんだよ」


---どういうこと?

「例えばの話だけど…死にたくない。死ぬのが怖い。

でも、死にたくない死ぬのが怖いからこそ、絶対死なない!っていうそれ以上先に進める勇気も得られる。
私はそうやって、恐怖を克服したこともあった。」

田中がとても真面目な顔をして答える。

「的を居たことを言うな、この小娘。
かなりの修羅場を潜ってきた戦士なのかもしれぬな」


恐怖を勇気に変える、か。


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---ありがとう田中!俺、先に進める気がしてきた。

「昼休み中随分悩んでたっていうのに、案外すんなり解決するものね?」

---ポジティブなのは俺の取り柄ってことさ!…お前も食べるか?


俺はそう言って、2個買ったシーチキンマヨネーズおにぎりを1つ田中に差し出す。

「いただくわ」

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田中は少し微笑み、俺と一緒におにぎりを食べた。



放課後。

あれから田中が先生にチクることはなかった。

どうやら長い時間帰ってこないのを怪しんだ化学の先生が、クラス委員長である田中に様子を見て来いと頼んだらしい。

帰ってきた後も、「本当に具合が悪かったみたいでトイレにいました」と告げ、俺がコンビニに行ってたことは一切言及していなかった。

感謝しかない。ありがとう田中。


だが、どうやって「完璧にバレないルート」をあいつは見つけたのか疑問でしょうがない。

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転校生・田中七奈子。

あいつの謎が深まったが、同時に面白くていい奴だとも思った。

残念なのは、胸がどうしようもない貧乳だってことくらいだ。

あれじゃあ掴むものも掴めん。

程よいサイズなら、女として惚れていたのかもしれない。

「やっぱお前はじーちゃんと同じくAV女優のヒカルのほうが好きか」

(お前が俺の心の中じゃなくて実体化出来るんだったら、間違いなく顔面殴っていたぞ)

「え~私~天魔王ゼクスオメガの分身だから~オメガみたいな~外見なんじゃない~?
お前は~幼女も~殴る~変態ロリコン野郎~なのか~?」


(お前のような生きた手羽先を女だと思ってねぇよ。早く出てけ手羽先!!!)

「手羽先手羽先って失礼な奴だな!私が美少女なのは昨日レトロフリークの天魔王ゼクスオメガを見て分かったことだろうに!お前が美少女好きなのはよく分かってるんだから私にももっと優しくしろ!」

ほんとこいつなんなんだよ、さっさと出ていってほしいわ…。

と、呆れて物も言えなくなってしまった。




そして俺は、今日もぴかりヶ丘に足を運んだ。

昨日「おおもりご飯」で買ったトンカツ弁当が思いのほか美味しかったからだ。

一口くれとせがんでトンカツを半分あげたら親父にも好評だったんで、お小遣いもらって親父の分含め二人前買ってくることにしたのだった。

ぴかりヶ丘商店街を歩いてちょっとした所でのことだ。

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「あ、この前のお兄さん!」

「ぴかりヶ丘の天使様」!天使様じゃないですか!!

「今日も商店街でお買い物ですか?昨日もどこか急いでたみたいですけど…」

ただ転びそうになったのを助けてくれただけなのに、まるで友達のように話しかけてくれる天使様。

---あ…えっと…その…おおもりご飯のお弁当を…お、お父さんに…お使い、頼まれてて…

「…あ~あーおおもりご飯!おおもりご飯でお買い物なんですね?」


---そ、です…だよ…!

ダメだ、天使様があまりにも麗しくて俺はまともに会話もできない。

天使様も何とか俺の言葉を聞き取り、返事をした。

「おおもりご飯は、私の幼馴染の実家でもあってとても馴染み深いお店なんです。
常連さんがいるなんて、私も嬉しくなっちゃうな~」


---幼馴染?あ、貴方も…この商店街に住んでるんですか…?

「はい。私はおおもりご飯の斜向かいにある『朔夜不動産』ってお店の店主の娘なんです。
良かったらうちにも…って言いたいけど、さすがに不動産屋に行くことはないですよね。」


この子、不動産屋の一人娘だったのか。


「それじゃあ、私急いでいるのでこれで!
今度会えたら、おおもりご飯でおすすめのメニュー教えますね!」


---あ、あう…ごい…ます…。

天使様は、またニッコリ笑って歩道を走って行く。

前回もそうだったが、一体何を急いでいるんだろう…?


「美人の前だとコミュ障となる…実にくだらない弱点だな」

(お前は美少女じゃないからこうはならねー安心しろ)



おおもりご飯にたどり着いた俺は、昨日と同じくレトロフリーク一式を鞄から取り出し展開。

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電源ボタンを押しレトロフリークを起動した後に、店のドリンクサーバで注いだ烏龍茶200ml前後を一気に飲み干し深呼吸をする。

ドンキーコング

この憎きゴリラの表情を思い出し恐怖しながらも…
「あ!でもね彩波維君、恐怖心は武器にもなるんだよ」

「例えばの話だけど…死にたくない。死ぬのが怖い。
でも、死にたくない死ぬのが怖いからこそ、絶対死なない!っていうそれ以上先に進める勇気も得られる。
私はそうやって、恐怖を克服したこともあった。」
先ほど田中に言われた言葉をもう一度思い出して、気合を入れる。

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この恐怖を、武器に変えろ…!

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俺は再び、「1 PLAYER GAME A」を選択して戦いを再開した。



「で、またゲームしないんかい!」

「日常パートの前哨戦は付き物だろ!?」

「じゃあ次回からゲームしろよ!?」


「するする!2に続く!」