前話「The beginning 3」

~2077年4月6日(火曜日) 午後5時半 ぴかりヶ丘商店街 おおもりご飯~

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ついに起動に成功した「レトロフリーク」。
だが…

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「よくぞ起動した!」

起動と同時に画面の中から現れる謎の少女が、俺の目を引く。

NEO
しかも、その声は俺の心に住み着く飛ぶ手羽先「ミク」のそれと全く同じだった。

(これが「ミク」の本当の姿?)

「ゼクス…オメガ…」

(え?どうした「ミク」?)

「天魔王…ゼクス…オメガ…」


「ミク」が動揺して俺の声は聞いてはくれなかった。

画面越しの「少女」は続ける。

「このレトロフリークを起動したということは、お主は『ダイバー』になったということじゃろう。」

---ダイバー?ダイバーってなんだ?

「ダイバーにまずはルール説明をするとしようかのぉ。
このレトロフリークは、市販されたものに細工を加えた特別仕様のレトロフリークとなっている」


---おい!質問に答えろ!


「その細工とは…ワシの分身を電子化して眠らせているということじゃ」

画面越しの「少女」は、俺の言葉に一切反応しない。

おそらく、起動したときに流れるように設定されているだけの一方的なメッセージのようだ。

仕方がないので、話を最後まで聞くことにした。

そして、分身って…「ミク」はこの「少女」の分身なら、同じ声で喋ってるのは納得だ。

なんで飛ぶ手羽先なのかはよく分からないけど。


「これはワシら一族の実験の過程によって生み出された産物…
すなわち、『魂の電子化』の残滓に当たる。
ワシらの間ではそれを『サイバーエルフ』と呼んでいる。
サイバーエルフは、一定の潜在力と融合係数を引き出した者の前に現れる。

そして、サイバーエルフに触れたダイバーは、サイバーエルフと『融合同位体』となる。
お互いの意思をもって、その融合は分離することは許されない、いわば呪縛のようなもの。
その呪縛に解き放たれたければ、ダイバーはサイバーエルフを成長する贄となってもらう。
サイバーエルフの成長方法…それは、レトロフリークで遊べるゲームをクリアしていくこと」


(魂の電子化?サイバーエルフ?融合係数?融合同位体?専門用語の羅列がまるで理解できん!)


「レトロフリークでゲームをクリアすればするほど、サイバーエルフは成長する。
成長したサイバーエルフはやがてワシ自身となり、新たな覚醒へと導かれるということじゃのう。
レトロゲームの世界に潜り、サイバーエルフの成長のためにゲームをクリアせねばならないお前は、いわば『ダイバー』
レトロ世界の潜水士ということになるわけじゃ。」


(ちょっと待てよ!じゃあ何だ、俺はこの女の実験に一方的に付き合わされてるってわけかよ?)


「レトロフリークでクリアすることができるとされるゲームは全部で約9000本。
さぁ、その9000本のゲームを手にせよ!
そしてサイバーエルフを進化させよ!
サイバーエルフは、ゲームをクリアするほど成長し魂の練度が上がっていく。
勿論サイバーエルフの成長を拒むことも可能だ。
だがそうなった時は、最終的にサイバーエルフに精神を蝕まれ、ダイバー自身の魂が消滅することになるだろう。
だが!全てのゲームをクリアしたその時、ダイバーとなった者に自由と絶対なる力を授けることになるじゃろう。
ハッピーバースデイ、ニューダイバー!
…説明は以上だ。検討を祈るぞ。」

(なんだこれなんだこれなんだこれ!?
俺はとんでもねぇオカルトアイテムを手に入れちまったってことじゃねーかよ!


「少女」に告げられたあまりの残酷な現実に、俺は頭がどうにかなりそうだった。

「おっと、最後に。ワシの名を教えてやろう。

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ワシの名は『天魔王ゼクスオメガ』!
人類最強の生命体じゃ!

よく覚えておくんじゃな、ダイバーよ!」


この言葉で「少女」の語りは終わり、画面から消滅した。

(おいおいおいおい・・・なんだよこれなんだよこれ…「ミク」
、どういうことか説明してくれよ!)

「分からぬ…ただ、今喋っていたその女ゼクスオメガは、私のオリジナルであることだけは思い出した。」


(お前の分身って話だったもんな?
お前天魔王ゼクスオメガなんて痛々しい名前で活動してたのかよ。
小学生が考えつきそうな名前してんな)

何故私のオリジナルが私をレトロフリークに電子化させて封印…サイバーエルフとし、他者にレトロフリークに触らせて復活させようとしたのか。
私は何故レトロフリークから外に出るのに必死であったのか。
私を成長させて何をしようとしてるのか。
一体全体、その目的が分からぬ。」

(お前が仕掛けたことだろ!無責任すぎるぞ!)


「ああ、なんてお詫びをしていいのかわからないな。すまない。
だが、一つだけ確かなことはあるぞ少年」


(なんだよ?)

「このレトロフリークでゲームを遊び、ひたすらクリアしていけば先に進めるということだ」


(9000本のゲームをクリアしろなんてむちゃぶりもいいところだがな)

「だが、クリアすればするほど私ことサイバーエルフは進化するといった。
そして最終的に自由と絶対なる権利を手に入れるとも言っている。
ゲームをクリアしていけば、このレトロフリークと私に込められた謎が解明していくのは確か。
…どうだ少年、私と協力しその謎の真相にたどり着きたいとは思わないか?」


(興味ねーよ!)


「即答か」

(興味ねーけど…ねーけど、俺はお前を俺の心の中から追い出したい。
あのオメガって奴が言った「自由」ってのは、お前が俺と分離することだと予想する。
だから、やりたくねーけどやってやるよ。
レトロフリークのゲーム、片っ端からクリアしてやろうじゃねーか!)

「途方もない作業だがそれでもやるのか?」

(やるさ!ポジティブなのは俺の長所だからなぁ!)

「っふ…嫌いじゃないぞ、お前。
私も自分自身の魂をサイバーエルフとして封印されたその理由を知りたい。

お前は私という存在…サイバーエルフを切り離したい。
そのためにお互いやるべきことは共通している。
レトロフリークのゲームをクリアしていくということ。
利害は一致した。
共に戦おうではないか、少年」


(上等だ!だが
「ミク」その前に一つだけ訂正すべきことがあるぜ)

「なんだ少年?」

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(俺は少年じゃねぇ。
『彩波維(さいばつなぐ)』っていう親からもらった名前があるんだ。ちゃんとそう呼べ)


NEO
「…いいだろう。よろしく頼む、維」

(よし。じゃあ「ミク」、早速さっき買った『ドンキーコング』を差し込んでみるぞ)

「うむ。まずは1本目のゲームを攻略開始だな」

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3つも穴があるもんだからどこに差し込むのかと最初困惑はした。

一番上の穴と微妙にサイズが似てるので紛らわしいのだが、一番下の穴が正解のようだ。

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カセットを差し込むと、一瞬だけ「読み込み中…」という表示が中央に表示されるものの、すぐに切り替わった。

画面には「ドンキーコング」に関する情報が記載されていた。

発売日:1983年7月15日…じーちゃんやキャノンボール店長の姐さんが言っていた情報が見事に合致していた。

ファミコン発売と同時に世に放たれた最初の一本…今から96年前っつう途方もない頃に発売されたってわけか。

こんなことにならなきゃあ遊ぶことなんてなかったんだろうが、これも何かの縁だ。

96年前の人間が衝撃を受けたっつう渾身の一作の歴史に、触れてみようじゃねぇか。

俺はコントローラのAボタンを押し、「ゲームを始める」を選択した。

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軽快なBGMをバックに現れるタイトル画面に、思わず疑問符が出てくる。

「ミク」、このタイトル画面は妙な点が多いな。)

「維よ、何が言いたい」

(まず一番下の表記。このゲームは1983年発売のはずなのに、年代が1981年になっている。何故2年のブランクが…?)

「言われてみれば確かにそうだな。1981年に任天堂が製作、日本製であるということを表記しているようだが…


(俺の勝手な推測だが、このゲームは開発に2年かかっているんだと思う


「あくまで発売年を表記するのではなく、開発を開始した時期の年号基準というわけだな」

(2年もかけて製作したってことは、相当な大作ゲームなんだろうな。
最初の相手にして手応えがここから伝わってくるぜ!)


「しかし維よ、妙な点が多いと言っておったな?他に何かあるのか?」


(ああ。他にも謎な表記が有るぜ。
このゲーム、1人と2人でそれぞれプレイモードがあるようだが、AとBって表記がある。
何が違うんだこれ


「AとB…数字で言うなら1と2、平仮名ならあとい…同じ記号が連続していると推測はできるが」

(同じ記号の連続…つまり、Aは1週目、Bは2週目ってことなのか?BはAをクリアできないような奴には到底挑む実力はない!という)


「少なくとも、違うモードであることは明らかではあるな」


(最初は「1 PLAYER GAME A」を選ぶことが基本なんだろう。
その証拠に、最初に既にそこにカーソルが合わさっている。)


「ではまずその『1 PLAYER GAME A』から選択してみてはどうだ?」

(そうしたいところだが俺はあえて「1 PLAYER GAME B」をやりたい)

「何故だ?BはAをクリアできないようなやつは到底挑む実力はないのではなかったのか?」

(っふ。俺にはその実力があるのさ。何故ならこのゲームは俺が選んだ運命の一本だから!)

「何の根拠にもなってないと思うんだが…?」

(「1 PLAYER GAME B」から挑むぞ!逆を言うなら、これができるなら「1 PLAYER GAME A」は余裕ってことでもあるんだからなぁ!…ってあれ?)

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(十字キーの下を押してもまるで微動だにしないぞ、このゲーム!)


「なんと、カーソルが動かない?」

(っく…つまりこういうことか。1 PLAYER GAME A」をクリアしてもいねぇお前は、赤子も同然!クリアしねーのに先に進ませるかバーカ!
って発売元の任天堂は俺を煽っていやがる)


「だが『2 PLAYER GAME』の方も出来ないのはなぜだ?」

(友達と一緒に遊びたいなら「1 PLAYER GAME A」をクリアしろこのボンクラァ!
ってことなんだろうな)

「本当にそうなのかぁ…?」

(これは発売元の任天堂って会社が俺に出してきた最初の挑戦状だ。
「1 PLAYER GAME B」をやらせる気がねーなら「1 PLAYER GAME A」を秒殺してゲームエンドだ。)


「じゃあ『1 PLAYER GAME A 』から攻略開始だな」

俺はコントローラの「STARTボタン」を入力。

おどろおどろしい音楽と共に画面が切り替わった。


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次の画面に出てきたのは、「ドンキーコング」というタイトルからは想像だにもしなかった画面だった。

(上にゴリラのような動物ぼ~っと突っ立ってる女の子。そして画面の下にはおっさんこいつら、一体どういう関係性なんだ?一体何をしている?)

俺の思考を深く考えさせる余地もなく、単調なBGMと共に、ゲームは始まった。

(よく分かんねーけど、一体どんなゲームなんだ『ドンキーコング』!かかってきや…)

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(何!?)

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(どういう…)

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(ことなんだ…!?)

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この時間、わずか15秒。


俺は何をどうすべきなのか一切理解する暇もなく、飛び跳ねる茶色い物体火の玉らしき動く物体瞬く間に処刑された。

そして画面に浮かび上がるは、「GAME OVER」の文字。

…なんだこれ…なんだこれ…なんだこれぇ!?


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そして再びタイトル画面に引き戻され、このゲームの非常さを実感した。

俺は人生初の、ゲームを遊んで絶望という感情が湧き上ってきた。

「えっと…その、維よ、恐らくそのゲーム…」

---わけがわからない…俺は、こんな絶望と、戦っていかなくちゃいけないのか!?

恐るべし、レトロフリーク…!


バジル~
「…あノ、お客様。ご注文のトンカツ弁当が出来上がリまシた」

俺が動揺して体が固まっていたが、後ろから弁当屋の従業員の一声を聞いて我に帰る。

---あ、ありがとう…ござい…ます…

「どウいタしマしテ」

たどたどしく喋る従業員は、お弁当の入った袋を渡し、静かに去っていく。

俺はレトロフリークの電源を消し、セットを一通り片付けバッグに戻す。

そして受け取ったトンカツ弁当を片手に「おおもりご飯」を去り、自転車に乗って実家に戻っていった。

だが、家に帰ってプレイを再開することはなく、俺はこのゲームの恐ろしさにただただ恐怖をして、自室のベッドで眠りに就いた。

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第1回目の戦い、「ドンキーコング」。

こいつは長い長い戦いに、なりそうだ…!

「いや、とっとと最初の位置から離れて炎を避けてかわせよ」



「というわけで第0話、これにて終了だ」

「やっとゲーム始めたのにお前ものすっごく下手だな。
どこからこのゲームに選ばれたとかいう自信は出てきたんだ」


「う、何も言い返せないけど…次回からいよいよ本格的に本編開始だ!」


「クリアできんのかぁ~?」

「やってみせるさ!次回、『Retro  Diver C2』Episode1!
『はぁ?ドンキーコングって、お前のことなのかよ!?』
に、チャンネル、セット!」


「バラバラババンバンしそう」

~「The Beginning」 Seane END.
Continued to「Episode 1-1『ドンキーコング(FC)編~はぁ?ドンキーコングって、お前のことなのかよ!?~』」~