→前話「The beginning 2」

~2077年4月6日(火曜日) 午後4時 ぴかりが丘~

目的地にたどり着かんと全速力で走ったが最後石に転んで躓くというギャグ漫画みたいになったと思いきや…

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転びそうになった俺を後ろから助けてくれた「女の子」が現れた。

サングラスに大人っぽい服を着ているから、「お姉さん」にも錯覚してしまいそうだ。


う、麗しい!


俺ロリっ子よりこういう大人のおねーちゃんの方が好みだなぁ。


もうちょっと胸があれば完璧だ…

「それじゃ、私急いでるんで!気をつけてくださいね、お兄さん」


---あ、ありがとう・・・ござい・・・ました・・・

俺の声が聞こえていたかはわからないが、笑顔で手を振ってそのまま走って去っていった。

あの子のことは今後「ぴかりヶ丘に住む天使様」と呼ぶことにしよう。

・・・っていやいや、「走ったら危ない」って言ったの君なのに君が走ってるんだけど!?

「あの女子中学生はこの地形に慣れているんだろう。おそらく生まれた頃からずっとここに住んでいるんだろうな。」

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すると、俺の心の中にいる手羽先こと「ミク」が冷静にツッコミを入れてくる。

…ってえ!?女子中学生?

『ぴかりが丘中学校』って書いてあった生徒証を持っていたから中学生なんだろうなーと。


(どうやって見たんだよ?)

「どうやら私はお前の視界に見えているものの情報をある程度読み取れるようだな。
あそこで歩いてる女のパンツの色は白
あそこで走ってる男は今反対側にある公園に向かっている。
お前は今カバンの中に、レトロフリークと電気屋で買ったACアダプターとマイクロSDカードとHDMIケーブルと昨日祖父の蔵から盗んできたAV女優ヒカルの痴漢もののエロ本を入れていて・・・」


(わああああああうるさい分かった分かった!
お前は俺の視界に見えているものの情報を目に見えること以外のある程度の情報を読み取ったりすることができる。そういうことだな!?)


「そういうこと」


でも使い方次第では有効活用出来そうな能力だなこれ。

気を取り直して、俺は万事屋に向かうのであった。

「必ずしも本当のことを教えるとは限らないけどな」

~~

たどり着くのは早かった。

商店街の中の一角に、「万事屋 キャノンボール」と書かれた大きな看板が見えた。

店の中に入る前に覗くとそこそこ人はいるみたいで、繁盛してそうな感じだ。

ガラスのドアを開け、中に入る。

中にいたのは、子供から老人まで老若男女でいっぱいだ。

主に取り扱っているのは、玩具やトレーディングカードだった。

古今東西のその手の商品が陳列されている、時代ごった煮の玩具屋といったところだろうか。

店にはカードゲームで対戦するスペースや、カードゲームのガチャガチャが並ぶ場所もあり、カードショップの色合いの方がどちらかというと強いかも知れない。

ところで、ゲームカセットって奴は、玩具に分類されるのだろうか?

遊ぶためのものなのだから玩具のようなものだと考えても良さそうな気はするが…。

「店員に聞いてみればいいんじゃね?」


「ミク」の言うとおり、まずは店員に聞いてみるのが一番だと感じた。

店の左端で、レジ前で店の様子を見ている女性店員さんに質問する。

---すいません。このお店に「ゲームカセット」って売ってますか?

その言葉を聞いた刹那、

「ゲームカセット~!?貴方、そんなオーパーツを探しにうちに来てくれたの~?」

と店員さんは目を輝かせながら、俺の手を掴んでくる。

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---最近「レトロフリーク」ってやつを手に入れて、それで遊ぶためのカセットがなくて困ってまして…

「レトロフリーク?随分懐かしいものを手に入れたのね~。
うんうん、あるある!取り扱ってるわ!
で、どの機種のカセットを探してるの~!?」


ビンゴ!あったぜゲームカセット!サンキューじーちゃん!


だけど、どの機種って?

そういえば「レトロフリーク」は10種類のゲーム機に対応してるんだっけか。

(「ミク」、これはどの機種って言えばいいんだ?)

「分からんが、昨日お前の祖父は、


『そのレトロフリークで遊べる最も古いゲームハードがファミリーコンピュータ。こいつは1983年発売だ。』

って言っておったな。」

(それだ!)
---ファミリーコンピュータって奴です


「ファミコンか~。あれもう100年くらい前の機種だしかなりの貴重品なのよねー」

---今所持金6320円あるんですけど、買えます?

「箱説明書付きはちょっと難しいかな~。安くても1万2千円はうちにあるのだと超えちゃってるから。」

---1万2千円…!?テレビゲームって、お金持ちの道楽だったんですか!?


「当時の定価は平均5000円前後よー。
でも今は骨董品レベルの貴重品だからね~。
でもカセット単品だったら安くて3000円前後くらい。
カセット単品でもいいの?」


---ちょっと何を言ってるのかよく分かっていないんですが、ゲームカセットは箱と説明書が付いているのが当たり前で、それらが欠品したものも別で販売してるってことなんですか?値段も4倍くらい違うんですが…。

「そうなの。ゲームカセットだけでもゲーム機があれば遊べるし、説明書を見なくても遊ぶことだってできるゲームもたくさんあるから、カセット単品で売ってることもあるの~。
値段はカセット単品の方が圧倒的に安いけど、それは箱と説明書も込で集めてるコレクターもいるからなの。
カセット単品だとコレクションとしての価値は低くなるから~」

---説明書あるのとないのとでそこまで値段が変わるのは驚きですね。

「売ってる場所に案内してあげるね~。古竹ちゃーん、ちょっとレジおねがーい」


レジを離れてしまうので、代わりに店の中央で漫画の陳列をしていた古竹という別の店員が呼ばれ、「了解、店長」の一言で移動を始める。

つーかこの人、店長だったのか。


店長に連れられレジとは反対の店の奥側へ。

「選りすぐりのラインナップなんだよ~」

店長はえへんと胸を張って自慢する。

本棚にカラフルな長方形がぎっしりと敷き詰められていた。

本棚の隣にはショーケースもあり、先ほど店長が話していた「箱説明書付き」にあたるゲームカセットが展示されている。

ゲーム機ごとに陳列は分かれているが、「ファミコン」と書かれてる場所のカセットの値段は以下のようなものだった。

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・重力装甲メタルストーム 4万3千円

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・高橋名人の冒険島IV 5万8千円

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・暴れん坊天狗 8万2千円

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・Gimmick! 15万7千円

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・サマーカーニバル'92 烈火 19万3千円

とても高校生のお小遣いで買えるような代物ではない。

本当に当時定価5000円前後だったのかよぉ!?

いくら100年近く前の骨董品同然の代物とはいえ、なんつう値段ついてんだこれ!?家電製品レベルだぞ!?


「ここらへんのレアゲーは今の貴方のお金じゃ買えないだろうから~、こっちだねー」


ショーケースを見て呆気に取られてる俺の様子を見て、店長は本棚の方を指差す。

その全貌に、驚きを隠せなかった。

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---え、あの、ちょっと待ってください。このカラフルな本棚に陳列されてるこの長方形が全部カセットなんですか?

「そうよー。自由に好きなの見ていって~」


店長はその場を去っていった。

この長方形、ざっと見ても1列に20本弱、それが8列も続いてるんだが…。

単純計算で160本から1本選ばなきゃいけないの!?

しかもこれ、カセット見ただけじゃあどんなゲームかなんて全く分かんないんじゃ…。

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1本、目に付いたカセットを適当に手に取ってみる。

ゲームタイトルが「ポパイ」とでっかく書いてあるだけで、それ以上の情報は何もなかった。

右上には「¥3500 ヤケ有り20%OFF」と値札シールに記述されている。

カセットの裏面を確認すると…

カセットについてのお願い
・精密機器ですので、極端な温度条件下での使用や保管および強いショックをさけてください。また、絶対に分解しないでください。
・端子部に手で触れたり、水にぬらしたりして汚さないようにしてください。故障の原因になります。
注意事項が記述されていた。

ご丁寧にありがたい。

けど、ゲームの情報がまるで入ってこねぇぞ!?

もう一本、適当に手に取っている。

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先程の「ポパイ」と比べると、まだ分かりやすいパッケージだった。

戦闘機が戦艦の上で戦っているのがかっこいいが、「頭脳戦艦ガル」というタイトルはちょっとよく分からない。

頭脳…?頭を使うゲームなのか?パズル的な?


船艦、というのは戦闘機の後ろのでっかいやつを指すんだろうが、こいつを操作するのか?じゃあ戦闘機は?

そして、気になるのが右上の「RPG」という文字だ。

RPGといえばロールプレイングゲームって略であることくらいは、俺も知っている。

だが俺の知ってるRPGって、剣だ魔法だなんだといったファンタジーもののイメージが強い。

戦闘機を操作するRPG…ちょっと、面白そうだなこれ。

しかも値段が「¥2500」「ポパイ」より1000円近く安い。

これで決まりか・・・!?

「う~む…私はそのゲームから危険な匂いを感じ取ったぞ」

(危険な匂い?)


「多分遊んだらお前が頭を抱える未来が見えてくるというか…」

(そうなのか。箱説明書付きを買えるのが一番だろうが値段が値段だしなぁ・・・。
カセットのパッケージだけで面白いかどうかを確認するなんて、不可能なことだ。
これって、漫画とかにも言えることでもある。
ジャケ買いはそれはそれで面白いけどさ。)


「お前のカバンに入れてるエロ本も、実用性があるかどうかはまだわからんということだな」


(そこはもう突っ込むな!)


中々面白そうなゲームの予感がしたが、「ミク」の警告を聞いて「頭脳戦艦ガル」を元の位置に戻す。

(えーい、どれがいいかなんて俺にはわからん!適当に選んだやつを買う!!!!)


「運に身を任せるか。それも一興だろう。」

本棚に並ぶ無数のカラフルなカセットを俺は無作為に見る。

これか?それともこれか?なんて思考を10回20回30回と繰り返した結果…

---これで、行こう!


俺は本棚の上から3段目左から14番目の「赤いファミコンのカセット」を手にとった。

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---ドンキーコング…

値段は、「¥3000」と書かれていた。十分買える価格帯だ。

「そのカセットから一番年季がかかったオーラを感じる。
もしかすれば、最も古いファミコンのゲームなのかもしれぬな。」


なんと、俺はファミコン原初のゲームカセットを引き当てたのかもしれないのか。

「ドンキーコング」を手にした俺は、レジに向かう。

レジにいたのは先ほど場所を案内してくれた店長だった。

「初めてのファミコンのゲーム、決まったのかしら?どれにしたの~?」

---これです。

俺はすっとカセットを差し出す。

「ドンキーコング!ファミコンのローンチタイトルを選ぶなんて!」


---ローンチ?


ゲーム機の発売と一緒に発売されるゲームカセットのことをローンチータイトルって言うの~。まさに掴みが重要ってこと。
ファミコンはその
『ドンキーコング』と続編の『ドンキーコングJR』、そして『ポパイ』の3作品を世に出して日本人を震撼させた
今日のゲーム分かも大きく繁栄していったのは、この3本の功労といっても過言ではないのよね」


そんなすごいソフトだったのか、これ・・・。

いきなり名作を引き当てたということなのか。

ん?
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1本、目に付いたカセットを適当に手に取ってみる。

ゲームタイトルが「ポパイ」とでっかく書いてあるだけで、それ以上の情報は何もなかった。
最初に見つけた「ポパイ」もそんなすごい代物だったとはな。

俺はカセットで名作を引き当てる天才なのかもしれないな。


「ただの偶然で何を天狗になっておる」


---というわけで、これください!これでファミコンデビューします!


「貴方、中々面白いわね~。面白さに免じて、このドンキーコング半額で売るわ~」

---え、マジっすか!?やったぜ、ありがとうございます、姐さん!

「姐さんなんてそんな~。私まだピチピチの15歳だよ~?」

・・・・・・はぁ!?俺より年下じゃねーかよ!!!


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こんなに色気たっぷりの姐さんが・・・俺より年下・・・???

しかも店長なんだぞ?

女の子って、分からんな。

さっき俺を助けてくれた「ぴかりヶ丘の天使様」だって「ミク」が言うには中学生なだもんね。

最近の若い女の子はスケベだなぁ!

「お前の思考回路がスケベなんだろうに」

---いや!色々教えてくれたしファミコン博士の姐さんですよ!ありがとうございました!また来ます!

「どういたしまして~またのご来店お待ちしてます~♥」

俺は「ファミコン博士の姐さん」にまた会いにこようと確かに誓ったのであった。



満足げに「万事屋キャノンボール」を出てきたのはいいんだけど、そもそも俺がファミコンカセットを買った理由は、ほかでもない「ミク」を追い出す手がかりを得るためだ。

じーちゃんからもらったレトロフリーク本体。

蔵の中で一緒に眠っていたUSB端子の専用コントローラ。

ここに来る前に電気屋で買ったHDMIケーブルとACアダプターとマイクロSDカード。

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そして「万事屋キャノンボール」で購入した「ドンキーコング」。

さぁ、全ての準備は整った。

願わくば、レトロフリークを起動してこいつがいなくなってくれれば本望だが…

「うーん、どうやって分離するんだったっけなー。」


お前が思い出すのが一番手っ取り早いんだよなぁ…まぁ、知らないものはしょうがない。

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俺は「万事屋キャノンボール」の近くにあったアイカツアイドルの聖地「おおもりご飯」で夕御飯用のトンカツ弁当(¥630)を頼み、店の中の空いている食事席に座っていた。

同時に、カバンに入れていたレトロフリーク一式のセット及び、父がよく愛用している小型液晶テレビを取り出す。

万事屋でカセットを買ってすぐにでもレトロフリークを起動しようと考えていたからだ。

説明書がないので、手探りでACアダプター・HDMIケーブル・SDカードを差し込む場所を見つける。

だいたいそれっぽい穴にぶち込めばいいのだろう。


コンセントは、携帯の充電用ってことで客に自由に使っていいと開放しているものを利用する。

一応言い訳すると、とりあえず起動するかどうか確認するだけなのでってことで、許可は従業員から得ているからな!?

全てのパーツを取り付け、テレビをテーブルに展開。

テレビとHDMIケーブルを接続した所で、裏面の電源ボタンをゆっくり押す。

「起動するかね~」

(やれるだけのことはやった。どうなる…?)


5秒後…

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テレビには「レトロフリーク」の文字が、はっきり見えた。


だいぶ年季入ってるだろうがちゃんと起動はしたぞ!

しかし、その画面が出て次に表示されたのが…

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「よくぞ起動した!」

「ミク」と同じ声で喋る、ただならぬ幼女のビジュアルだった。

~~

「やっぱりゲームしないね~」

「これは序章だから!まだ始まったばかり!ビギニングビギニング!」

「次回、レトロフリークに隠された陰謀とドンキーコングに苦悩する少年の姿が描かれるぞ」

「いいから早く追い出したい・・・」


「頑張れ少年」

~Continued to「The Beginning 4」~