前話「The beginning 1」

~2077年4月5日(月曜日) 午後2時30分 咲那町 彩波家~

「奥の方頼んだぞ、維(つなぐ)!」

---OKだ、じーちゃん

学校が終わった後のことだ。

突然、たまにしか連絡をくれない母親から連絡が着た。

何でも、じーちゃんがたまににやってる家の蔵掃除を手伝ってほしいと。

いつもならかーちゃんと一緒にやってるみたいんだが、かーちゃんも忙しいしが外せない用事が出来たみたいで代打として俺が抜擢されたってわけだ。

じーちゃんの家の蔵は物置そのもの。

じーちゃんの他にもかーちゃんや父が何かと物を置いたりするから、散らかってるし埃はかぶるしで相当汚い。

更に広いこともあってか、掃除となるととても1人でこなせるような量じゃない。

嬉しいことに、ちゃんと掃除してくれればお小遣いくれるって話だった。

この金で夜中課金する所まで俺の未来は見えてるぜ!

じーちゃんは入口に近い場所から掃除を始め、俺は逆に奥側から始める。

しっかし、ほんと色んなものが置いてあるな。

何年前の本かもわかんねーエロ本埃被った麻雀卓に何が入ってるのかも分からん箪笥等等。

特にエロ本はばーちゃんも来るだろうからちゃんと隠せよじーちゃん…痴漢ものって中々にマニアックだなぁ。

エロ本を真顔決めながら片付けていく。

なんか良さそうなのあれば貰っていきたい所だが…ん?

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なんだこれ?四角い物体に変な穴が3箇所空いてる?

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側面にも2つの細長い穴と、右下に細かい小さな3つの穴が空いていた。


凸凹穴空き置物?


いや、これマジで何する物体なんだ?


そしてよく見たら側面左上に何か文字が…?レト…

と、文字を読もうとした瞬間だった。


NEO
突如四角い物体は眩く白く光りだし、目の前から白と赤の謎の肉片みたいな奴が四角い物体の中から現れる。

まるで「飛ぶ手羽先」…ちょっと形を変えれば「千葉県」っぽく見えなくもない…?

その肉片は、俺の体内を突き抜け消えていった。


「あーやっと出れたよー!長かった~!」

同時に、俺の脳みそに語りかけるように女の声が響き渡った。

---うわあああ!!!


なんだこれなんだこれなんだこれ!?

なんの心霊現象だよ!?この蔵、幽霊でもいんのかよ!?


「どうした維!?」

俺の声を聞いてじーちゃんが慌てて駆けつける。

---と、飛ぶ手羽先が・・・俺の体を突き抜けて・・・脳内から女の声が・・・

「何を寝ぼけたこと言ってるんだ維?」

---ほんとだってじーちゃん!この四角い箱から…


NEO
「あー出れた出れた!出してくれてありがとな、少年!」

---うわぁ!!!


「落ち着け維」

---じ、じーちゃん・・・俺の後ろから声が聞こえなかった?

「お前の声しか聞こえてないぞ」

おかしい。

今、明らかにじーちゃんにも聞こえる声で俺の体の中に入った「飛ぶ手羽先」は喋った。

しかし、じーちゃんの様子を見ても本当に聞こえていないようだ。

「…一回掃除やめるか。家に戻って休憩するぞ、維。」


呆れたじーちゃんは、俺を連れて一度蔵を出る。

そしてじーちゃんの家の茶の間に向かい、ばーちゃんが出してくれた緑茶を飲んで一息ついていた。

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蔵を出る前、実はさっきの四角い物体を持ってきていた。

---じーちゃん、これ蔵にあったものなんだけど、何なの?

「懐かしいものが出てきたな。それは『レトロフリーク』だ。」

---レトロフリーク?

レトロフリーク

「大昔に発売したゲームを、その箱1個あれば遊べるっていう便利なゲーム互換機なんだ。」

じーちゃんの話を聞いたところ、こういうことであった。

まず、所々に空いていた穴はゲームのカセットという物を入れるための差し込み口だったらしい。

カセットをいれる穴の数は全部で5つ。

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右下の三つの穴はUSBポートのようで、専用のコントローラの差し込み口になっているらしい。

要は、色んな昔のゲームで遊べるゲーム機なんだと。

ゲーム…機…?

---なぁじーちゃん、ゲームって機械で遊ぶものだったのか?

「お前はそんなことも知らん世代なのか…まぁ無理もないか。今はもう携帯のゲームに、PCのゲームの方が主流になりつつあるしなぁ。
元々はそのゲーム機で遊ぶのが当たり前だったんだぞ。」


NEO
「テレビゲームを知らない少年って…ここいつの時代?」


また「手羽先」が俺の脳内で喋りだしたぞ…。

「手羽先言うな!私はな…えっと…なんて名前だっけ?」

(え、ちょっと待てよ、俺の考えたことお前に丸聞こえなのか?)


「残念ながら」

(てゆーかお前ほんと何なの?幽霊?手羽先の?)

「手羽先言うなと何度も言わせるな!…実は私自身何者なのか覚えてない。」


(はぁ?ふざけんなよ、お前とっとと俺から出てけよ!手羽先幽霊!)


「いやー、レトロフリークに封印されて出ていきたい!って気持ちだけははっきり覚えてるんだけどなんで封印されたのか、自分が何者なのかはさっぱり覚えてないんだよな。
困ったな。出ていく方法も分からん。」


「おい、また表情が険しいぞ?大丈夫か維」


---ううん、何でもないよ。

「ちょっとお前の精神状態が心配だけど、掃除を再開するぞ維」

こうして一息ついた俺達は再び蔵に戻るのであった。

「えっと…私の名前は…う~んと…」

(手羽先でいいだろ)

「しつこいぞ!私の名前は…ミ…ミ…」

~~

3時間に渡る作業の末、無事蔵の掃除は終了した。

「維、お疲れ様」


---じーちゃんこそ、年の癖にそんな無理して動いて大丈夫なの?


「何言ってる。まだ60にもなってねーんだぞ。まだまだ現役だ」


---ふーん。その割にキツそうだったけどな。もう引退したほうがいいんじゃってレベルで

「っけ、若いからって調子に乗りおって…で、約束通りほら」

じーちゃんはズボンのポケットから財布を取り出し、1万円札を渡す。

---サンキューじーちゃん!さすが現役サラリーマン!そこに痺れる憧れる!

「随分態度が変わったなおい」

「お前、ディオの取り巻きかよ」

(うるせぇ手羽先)

「違うってだから!ちゃんと名前思い出したんだよ。私の名前は『ミク』!
手羽先じゃなくてミクって言うんだ!次からそう呼べ!」

(ミク…はつn…)

「違う!ボーカロイドじゃない!」

---あ、そうだ。じーちゃん、さっき茶の間で話してたレトロフリークについてなんだけど…

「ん?欲しいか?別にいいぞ。
掃除しててもしかしたらあるかなーと思ったが、全部カセット売ってしまったみたいだし、ただの置物にしかならないからな。
追加の報酬ってことで。」


(色々と訳のわからない状況で頭が追いついていないが、これだけは分かる。
この
手羽先ミクを追い出すためにこのレトロフリークについて調べないとダメだ。)
---じーちゃん、このレトロフリークってどこで買ったの?


「ああ、それは貰い物なんだよ。昔のお得意様の。」


---どんな人だったのか気になるな。

「お前もニュースで名前くらい聞いたことあるだろ?天才集団『四天王一族』って」

---うん、ニュースでよく話題になるよね。


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人工アンドロイドを作った超天才少年の南鉋竜

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今まで謎とされていたある恐竜の生態を発覚させた西菊子キサラ
が親戚同士とかなんとかっていう。
じーちゃん、あんなヤバイ少年少女と知り合いなのかよ


「正確にはその子供達とは面識はないが、その一族の一番偉い人俺の会社のお得意様だったんだよ。
接待の土産ってことで俺や俺の部下にあげてたんだ。」


---そうなんだ。その一番偉い人ってなんて名前?

真緑幻宗(まりょくげんそう)って人だな。」

ミク、この名前に聞き覚えは?)

「うーん…あるようでないような…」

(効果なしか。しかも四天王一族なんて、あんなヤバイ天才子供がいる集まりがどこに生きてるのかも知らないし…持ってた人間から情報を引き出すルートは難しそうだな)


「維、なんでそんなこと聞きたいんだ?」

---えっと~…じーちゃんとこのレトロフリークの思い出が聞きたかったんだよ!

「といってもお前の父さんがお前くらいの年だった頃に2人で何本か遊んだくらいで、思い出と言えるものは別にないんだよな。」


ってことは、じーちゃんととーちゃんはレトロフリークを触っている。

けど「ミク」のことは知らない。

俺は触ったから「ミク」は出ていけた…?


---そうだったんだ。じゃあ後は父さんに聞いてみるよ。帰ったら遊んでみるわ!

「維。カセットがないとレトロフリークは遊べんぞ。ついでに言うなら、映像をテレビに出力するHDMIケーブル、電源の役割をするACアダプターと各種アップデートするのに必要なマイクロSDカードもないからそいつは今ただの四角い置物でしかない」

---え、この箱だけで出来るわけじゃねーの?そのケーブルとアダプターとSDカードは?

「掃除してもなかったし、売ったか捨てたか…まず、それらとカセットを1本でも手に入れないと始まらないぞ」

(こりゃ、思ったよりも遊ぶハードルは高そうだな…)


「全部Amazonで買えるんじゃね?」

(それじゃあ発送までに時間がかかる!明日色々な店行って必要なもの探すぞ)

「そんなに早く遊びたいのか、レトロフリークで」


違ぇよお前を追い出したいんだよ!そのためにはこのゲーム機を起動させるのが先だと思った)

「ケーブルやアダプターやSDカードなら電気屋行けば1000円もせずに売ってると思うぞ。
ただカセットは一番古いものだともう100年近く前のものも多いし、探すのは困難かも知れないな」


---100年…前?

「そのレトロフリークで遊べる最も古いゲームハードがファミリーコンピュータ。こいつは1983年発売だ。」

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---今から96年前じゃないか!

「そう。丸々約一世紀分。だけどそんなファミコンのゲームが今でも遊べるとなるとちょっと胸が熱くなるかもしれないな」

(100年前の物なんてそれこそ骨董品屋とかのレベルだよなぁ…)


「そういえば、ちょうど今月から隣町のぴかりが丘の方で、万事屋が出来たって聞いたな」

---万事屋?

「何でも屋ってことだ。主に取り扱っているのは玩具とカードみたいだが。
そこに行った知人が結構変わった品物も売ってるとか何とか言ってたけど、もしかしたらそこにゲームカセットが売ってるかもしれないな。」


--場所教えて!

「確か茶の間の新聞の中に開店記念の広告チラシがあったからそれもやるよ。」

この一万円、ネトゲの課金に使おうかと思ったがやめだ。

一刻も早く「ミク」を追い出すために、レトロフリーク起動のための資金にしよう。

「私としては、レトロフリークから抜け出せれたからそっから先はどうしようとか何も考えてなかったんだよな。追い出したいなら好きにしてくれれば。」

(ああいいだろう。追い出してやるよ。一秒でも早くな!)

「頑張れ少年~」

~2077年4月6日(火曜日) 午後3時30分 ぴかりが丘~

翌日、学校が終わって自転車で学園の隣にある「ぴかりが丘」という町へ向かう。

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ぴかりが丘は、昔テレビで大人気だった女の子のヒーロー「プリキュア」っていうアニメシリーズの聖地だと言われている。

何でも、ここに昔本当にプリキュアがいて、悪と戦っていたという噂が流れるほどだ。

本当かどうかはさておき、実際にここで活躍していたって言われる「ハピネスチャージプリキュア」ってチームのプリキュアの銅像が建っていたり、

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プリキュアの博物館なんかがあったりと何かとプリキュアを推している町として全国では有名だ。

だがそれ以上の注目点としては…

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ぴかりが丘商店街の中にあるお弁当屋さん「おおもりご飯」だ。


ここは、アイカツアイドルの聖地としてその筋では有名なんだ。

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300年に1人のレジェンドアイドル「ゆうゆう」。

この「おおもりご飯」は、アイカツ黄金期と呼ばれる第一世代において、「神崎美月」「星宮いちご」「大空あかり」という大物スターに比べると知名度は圧倒的に劣るものの、俺のとーちゃんを始めファンが一定数いた知る人ぞ知るアイドルの実家でもあるんだ。

俺の父を始め、「ゆうゆう」のファンだったものがおおもりご飯に来ることはよくあることらしい。

肝心の「ゆうゆう」本人は、去年の3月に亡くなったそうだが。

正直これは父の情報でしかないし俺の世代から明らかに離れてるから、俺はファンじゃない。

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俺はなんといっても、アミバちゃんの…!

「解説長いなー少年。早く本題の万事屋に行けよ」

(んだとぉミク!俺は今ぴかりが丘を知らない人のために解説してるんだよ!)

「だが何故だ、ここが懐かしく感じるな」

(懐かしい?お前ぴかりが丘の人間だったのか?)

「それは分からんが…ここでよく、何かを買いに来ていたような…?」

ミクが何者なのかは、昨日から一日中問い詰めてみてもさっぱり分からない。

どうやら生前は人間だったことと何かをしてあのレトロフリークに封じられていたことまでは分かったんだが、それ以外の情報は未だに引き出せずにいる。

だが、レトロフリークに封印されていたんだから、レトロフリークを起動すればもしかしたら何か手がかりがあるかもしれない。

幸い、じーちゃんの言ってたように電気屋でHDMIケーブルとACアダプターとマイクロSDカードは買えた。

後はゲームカセットだけだ。


そのゲームカセットを探しに、昨日じーちゃんが教えてくれてた万事屋に今向かっている。



ぴかりが丘について数十分ほど自転車で移動した後に俺は目的地のぴかりが丘商店街にたどり着く。

この中に、新しくオープンした万事屋があるらしい。

よし、善は急げ!走って向か…

「あ、転ぶぞ」

ああああああああああ転ぶ!なんでそんなとこに石があるんだああああああ

…と思ったらあれ?

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「大丈夫ですか?ここの道路、石とか片付けてない所あるから走ったら危ないですよ。」

転びそうな俺を後ろから片手を掴んでくれた「女の子」によって事なきを得たのであった。

~~

「次回に続く!」

「いつになったらゲームするんだこの作品」


維(ミク憑依)

「最後に分かりやすく今の状態を図にしてみたぞ!」

「お、追い出したい早く…」

~Continued to「The Beginning 3」~