発売当時から見たい見たいと言って結局数年経過してしまったが、やっと視聴しました。


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概要から。
本作は、2011年10月から2012年9月まで日5枠で放送されたTVアニメ「機動戦士ガンダムAGE」のOVA作品。
名前こそ冠してはいないが、「機動戦士ガンダムSEED」の頃からの恒例である新作カット+本編を再構成したスペシャルエディションに準ずる作品。
内容としては、全4章構成であるうちの第2章「アセム編」と第4章「三世代編」を中心とした構成で、キービジュアルにもなっている2代目主人公アセム・アスノ(画像右)とゼハート・ガレット(画像左)の物語という視点で描かれている。


穏やかではない話だが、あえて本作の背景を説明する。
元のTV版は、皆が期待するガンダムシリーズかつ賛否両論な作品を多く作り出したレベルファイブとタイアップという組み合わせだったこともあってか、発表当初から不穏な影が取り巻いていた。
そして燃料を投下するのかのごとく、放送前や放送開始直後にタイアップ元の社長の配慮のないかつ不必要な発言がまとめブログなどで悪い方向に話題を取り上げられてしまったことで、ネットでの評判は最悪なスタートだったことは今でも記憶に新しい。
いざ本編が始まっても粗探しをしたほうが早いというほどの体たらくであり、最後まで本作の評価が覆ることはなく、見ていない人間にも最後まで見た人間にも駄作扱いをされてしまっている。
ある意味では問題作でありつつも固定ファンはそれなりにいた「機動戦士ガンダムSEED DESTINY」より悲運な作品なのかもしれない……。
かくいう俺も前述のタイアップ元の某会社の社長の発言にはさすがに擁護のしようがないほどの酷い失言だったと思うし、完璧な自業自得もいいところという考え。
本編も全体の流れで見ても個々の流れで見ても ちょっとこれはどうなんだ……っていう点も多く、当時のブログ(2代目)で批判なんかもしていた。
ちなみに放映終了後にはTV版のレビュー記事を執筆していたのだが、あまりにも辛辣な言葉しかかけられず書いていて気持ちが良くなかったので没にしたなんてこともあった。
このような感じでシリーズきっての問題作ともっぱら定評。
だが、俺は数年経過してやっと本作を落ち着いて評価できるようになったからなのか、それでも本作のことは嫌いではないという評価をしている。
マーケティングの方法が酷かったかもしれないが、

  • 進化してかつ劇中では唯一無二の存在であるガンダムの概念(終盤にパチモンのレギルスなんて奴が出てきたけど)
    かの「Vガンダム」を更に発展させていたのが面白い発想だった(実際の本編でそれを全く活かせてはいなかったが)

  • 4クールで宇宙世紀作品でも成し得なかった100年間の戦争を描こうとした挑戦的な姿勢
  • クセはあるが俺好みのデザインが多かったMSデザイン(ガンプラの出来もすごく良い)
  • 同じ血脈を受け継ぎながらも3世代の主人公たちの全く違った思想が最終的に1つとなっていく様

etcetc


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こうして挙げていくと、素材自体はとても良くその調理の仕方と調理人の力量不足によって受け入れられなかった作品だった(+まとめブログ等の悪意のある記事のせいで必要以上にバッシングを受けてしまったこと)というのが俺の結論だったりする。
だから最後までしっかり見た上で本作を駄作というならそれはなんらおかしいことだとは思わない。
でも俺は可能性があったという意味では一概に駄作とはいえないかなというスタンス。


以上が元のTV版の大体の背景なわけなのだが、そんな誰もが忘れ去った1年後に本作は発表された。
最初は誰も期待なんてしていなかったはずだが、ネットでの評判は予想外にもとても良く、発売当時から是非視聴したかったのだが、やっと念願が叶った。


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まず特筆すべきはTV版のメインで関わっていたスタッフがほぼ総入れ替えされていたということ。
まるで、本作の戦犯と呼べる人物たちを排除したような形であり、別の媒体で評価を得た人物たちによって描かれた「新たな解釈のアセムとゼハートの物語」と言える作品になっている。



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何分最後に見たのがリアルタイムから約3年ぶりだったこともあり、具体的な追加シーンを挙げろと言われても全ては分からない。
が、少なくとTV版のアセムの初陣においてここまでのスーパーパイロットぶりを発揮はしていなかったと思うw
冒頭から素晴らしい激闘を見せてくれて、まるでファーストの「ガンダム大地に立つ」を彷彿とした戦闘だったね。
本作で追加された戦闘シーンのそのほとんどは、TV版では全く見られなかった激闘の数々が多く、そこだけ見ていても全く飽きない。

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TV版では尺の都合上か適当に片付けられてしまったアセムの学園での日々の掘り下げもしっかりやっている。
……まさかヒロインの水着を拝めるとは予想していなかった。ZZでセイラさんが出てきたあの謎のシーンばりに驚いた。この作品は主人公と結ばれるヒロイン達にはこぞって厳しいことで定評があるがな
もう開始30分あたりで「そう、TV版でこういうのが見たかったんだよ!」っていうのをたくさんやってくれるもんだからもう評判が良いのも納得だよ。フリットやキオ編でもやってもいいんじゃないのかこれ?

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ジョイメカファイトで優勝するMS部(ぇ

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これに関してはもう意味が分からないwww
何のイベント????

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アセム、ゼハート、ロマリー。
3人の関係性をしっかり胸に刻み付けておけばおくほど、これからの展開はより一層辛いものになっていきます。
ここらへんの重みもおそらく同じシーンを使っていただろうTV版とは全く違っていた。

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これはおそらく本作で追加されたAGE-1の換装の1つ?TV版にはいなかったはず。
フィニッシュがすごくファイヤーダグオンっぽくて好き。


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知りたくもなかった現実に絶望するアセムとロマリー。
自分たちの関係性が全て嘘だったと気づいたことで、二人の進路は大きく変わってしまう……。
これはアセムとゼハートの、半世紀に渡る宿命の始まり……。


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ここからはアセムとロマリーが連邦軍に所属してヴェイガンと戦うって話になるんだが、おそらくここらへんはTV版とほとんど同じだったんじゃないかな。

個人的に好きなのは、Xラウンダーの適性が全くないと診断されて落ち込むアセムに、上司のウルフが励ますシーン。 
このシーンの何が良いって、アセムとゼハートの境遇が全くの真逆のものだ、って気づける所。
アセムとゼハートは何が違ったって、それは「個」として見てくれた人がいたかどうかっていうのが大きいと俺は考える。
ウルフは、フリットの息子としか見ていない周りの人間とは異なり、アセム個人を見続けていた。
そしてそんなウルフの言葉が、後のアセムの人生に大きな影響を与える事になる。
対するゼハートは、確かに人望がないわけではなく信頼してくれた人こそいたものの、それはあくまで軍の上司としての彼の一面だけ。
彼個人を見ていた、という人物は生涯一人も出てこなかった。
それは、後の心の支えにもなったフラムも例外ではなく……。
ゼハートにも誰か個人として見てくれた人がいたならば。
こんなことにはならなかったのかもしれない……。


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ウルフ隊長、実は結構好きだったりするキャラ。
俺はアセムが主人公の中で一番好きだったりするが、その要因は彼の影響と言っても過言ではないからね。
小野大輔がこんなベテランの軍人キャラ演じるとはって最初は戸惑いはしたけど、乗ってるGバウンサーはかっこいいし散り際のセリフも名言だしといたれりつくせりすぎましたわ。


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Xラウンダーなんか目指さなくてもいい。目指すべきは、スーパーパイロットだ。
彼の遺言が後にアセムをあれほど強くさせるんだよな(´;ω;`)


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ここからのダブルバレットの無双っぷりはTV版で見たときも震えたなぁ~。
出番がものすごく少なくて当時は不満を漏らしたダブルバレット、改めて見てもすごくカッコイイわ。
フリットの怨念に縛られ続けたデシルを完全に浄化した、っていうのもすごく伝わってきたしね。


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アセム、覚醒ッッッ!!!!!


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最終的にこの戦いはアセムとゼハートが再び共闘して〆となる。
これで二人はまた友達に………とはいかず。


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ヴェイガンのお家芸、コールドスリープから目覚めるゼハート。
ここからは第3章「キオ編」に入るのだが、こちらはアセムとゼハートの話の本筋には大きく関わる話ではないため、ばっさりカットしてすぐに第4章「三世代編」に移行。


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そしてここからのゼハートの心の支えになるフラムの登場。
ちなみに今俺はGレコ見てるんだけど、ノレドとは全く違うな~。


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ここはおそらく追加シーンかな?と予想するゼハートの心理描写。
キオ編以降ゼハートの掘り下げってすげー薄かったのに加えて断末魔もあんまりだったもんだから、この追加はGood!
ゼハートはかつて仲間だった者たちの亡霊に取り憑かれ、自分はこれからどうすべきなのか葛藤していく様は見ていて辛かった。 


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一方のアセム(現在はキャプテン・アッシュ)側の掘り下げはなりを潜めるようになる。
本作だけ見ててもなんでアセムがこうなったのか、というのは全く伝わらないね。
従って後半のキオ編以降の本作はゼハートが実質的な主人公になる。


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そして、ゼハートという人物で最も槍玉に挙がりやすい「イゼルカントのプロジェクトエデンを否定したのになんで結局意思を継いじゃったの」問題も、本作では納得できる形で収まっている。


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亡霊に取り憑かれ死人を悼む気持ちが強まった結果、彼は散っていた人間を中心に物事を考えるようになってしまう。
その気持ちが、例え偽りの楽園であっても、そのために死んでいった者達のために自分はあえて狂気に取り憑かれなければならないのだ、という結論を導く結果となってしまう。
自ら狂気へと堕ちてしまったっていう過程は実に丁寧だったし、ただのイゼルカントの盲信者のような描かれ方をしていた(そうじゃないのは分かってるけどそういう風に見えてもおかしくはない)TV版とはやはり伝わるものが全く違った。


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赤いガンダムレギルス………!?(◎до;)
これもまた本作オリジナルの機体だなぁ。ゼハートらしくて良いカラーリング!
シャアのオマージュなんかの意味合いもあるんだろうけど、ちゃんと劇中でも「火星の赤」って説明してるしその理由付けも俺は好き。


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ガンダムを倒すために死んでくれ、と間接的に告げられてもなおゼハートの悲願を達成しようと必死になったフラム。
ゼハートを「個」として見てくれた人は誰もいなかったとは前述した通りだけど、彼は人望という面だけ見れば本当に恵まれていたんだよね。
まさかキスまでするとは思わなかったが((((;゚Д゚)))))
二人のなんてことない戯れや絡みも見てみたかったよ(´;ω;`)


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TV版にはアンサガやFF9顔負けのポっと出のラスボスのゼラ・ギンスって奴が出てくるんだけど、本作はあくまでアセムとゼハートの物語。
最終決戦も、二人の激突となります。
最後の最後まで己の考えをぶつけ合い、激しく戦いあう二人。
このラストバトルは思わず3回見直すほどの名勝負だった。
TV版なんてゼハート出撃わずか1分弱ではいさよならという、あんまりな扱いだったからな。
尺の都合だけで片付けていい問題ではないね。こんだけ引っ張ってきたのに。


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ラストの幼きアセムを重ねてぶん殴ってレギルスを倒すのは脳汁溢れたわ………!!!!


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二人の因縁の全ての終わりには、かつて仲間だった3人のイメージがゼハートの脳裏に………(TдT)


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そしてアセムの言葉を聞き、 納得して逝ってしまうゼハート………。゚(゚´Д`゚)゚。
悲しい、悲しい戦いだったよ………。


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EDの後は、TV版最終回と同様の展開があったことをナレーションで片付けることで、最後の最後までアセムとゼハートの物語であることを徹底して終幕。
このお墓、誰が立てたんだろうな……。
アセムなら、彼はどうやってフラムの名前を知ったんだろうって疑問に思ったしね。


うん、俺はやっぱり「ガンダムAGE」が好きだなって心から感じた作品。
作品の調理人が変わるだけでここまで感動したんだもん。
結局は同じことをやっているはずなのに、伝わってくる重みなんかは全くの別物。
やっぱりAGEには大きなポテンシャルがあったんだよなって言わずにはいられない作品だった。
ただ本作、一つだけ難点を挙げるなら「本作だけ見てガンダムAGEは語れない」ということ。
本作の主人公はアセムだけではありません。フリットやキオだってそうです。
この二人は本作ではあくまでおまけのような扱いでしたが、本編ではアセムと同じくらい重要なキャラクターです。
本作を心から面白いと言えるのは、TV版を最後まで見てそのダメさ加減を知った人間だけです。
まぁ。アセム編に関しては本作だけでも問題ないだろう。
だが、それ以外の章はTV版を見ないと絶対理解できない。
あくまで、TV版を全て見てその補完として見るべき作品でした。そこはTV版をなかったことにしろなんて監督直々に暴言を吐いた「ガンダムSEED DESTINY」のスペシャルエディションとは大違いだったね。



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アセムとゼハート。
二人はどこか似ていたけど、その境遇は全くの別物だった。
その悲しい二人の宿命を描きに描いた「歴史の重さ」を痛感出来る名作でございました(TдT) 



(2015年9月16日 1時43分追記)
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